旧敵国条項から猿の惑星へ

国連総会で、高市総理が「旧敵国条項」の廃止を訴え、中国がこれに反発した。

「旧敵国条項」とは何か?

国連憲章には、第二次世界大戦の敗戦国(日本やドイツなど)を対象とした「旧敵国条項」という規定が残っている。これは、「旧敵国が再び侵略行動に出た場合、国連安全保障理事会(安保理)の許可がなくても、例外的に武力行使などの制裁を行える」とするものである。

条文通り解釈すれば、いかなる国も国連安保理の了解なく日本を攻撃することができる、なんとも恐ろしい条項だ。

(※現在、この条項は実質的に機能していない「死文化」した規定とされており、日本やドイツは不平等だとして条文の削除を求めている。)

では、この条項をあえて「反対解釈」してみよう。

条文の原則:「相手が旧敵国であれば、安保理の許可なく攻撃できる」

反対解釈:「相手が旧敵国ではないならば、安保理の許可のない攻撃は違法となる」

つまり、旧敵国以外を攻撃する際は、例外なく国連安保理の承認が要るという明白なロジックが導き出される。(もっとも、国連憲章第2条4項において「すべての国に対する武力行使の禁止」がすでに大原則として明記されているため、わざわざ反対解釈を持ち出すまでもないのだが)

さて、ロシアが攻撃しているウクライナ、アメリカが攻撃したベネズエラやイランといった国々は、第二次世界大戦における「旧敵国」ではない。したがって、旧敵国条項の反対解釈によれば、これらの国に対して国連安保理の承認がないままで武力攻撃を加えることは許されないはずである。

安保理国は、自分たちに都合の良い条項(旧敵国への攻撃権)だけを後生大事に抱え込みながら、その裏返しである「反対解釈」が示すルールは完全に無視して、好き勝手なことをやっているのだ。

中国は、旧敵国条項を盾にして日本の言動を非難するのであれば、その反対解釈を用いて、同時にアメリカやロシアの行動も非難するべきであり、その方がフェアである。

理由は何であれ、戦争は許されざる行為だ。どんなに大義名分を並べて正当化しても、それは安全な場所にいる為政者の理屈に過ぎない。戦場に送られる兵士は、為政者の単なる駒として消費され、本来なら幸せになるはずの人生を為政者のために失っていく。

戦争など、為政者同士がデスマッチで決着をつければ、国民は誰も傷つかない。己の権力闘争に、無実の国民を巻き込むべきではない。

■ 結論:旧敵国条項を盾に特定の国へ攻め込む特権を主張するなら、その反対解釈として、旧敵国条項で示されていない国への「安保理の承認なしでの武力行使」は国連憲章違反となる。

自ら作ったルールを破るこのような暴挙を、あろうことか安保理国が行うとは。国際連合も、かつての国際連盟と同じ崩壊の道をたどることになるのだろうか。

「歴史から学ぶ」という言葉があるが、今の為政者は、どの過去を指しているのかわからない「過去の栄光」を取り戻すことをスローガンに、歴史の教訓を学ばず、悲惨な歴史を繰り返している。

この無法状態が続けば、「猿の惑星」になる日も遠くないかもしれない。

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